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レンズマンシリーズを読む(1937~)

レンズマンとの出会いは2008年頃。

 
科学の進歩に対する圧倒的に楽天的な態度が非常に心地よいというのが第一印象であった。レンズマンシリーズの主要部分が執筆されたのは1930年代後半から1940年代前半で、人間に対して核兵器が使用される前だったことの影響もあろうと思う。
 
やや優生学とも見える人類の進歩への希望
科学技術礼賛
自由と専制の戦い
精神的・人格的偉大さへの崇拝
自由主義経済への信頼
男性性女性性の強調
 
現代的な観点からあげつらえば枚挙にいとまないが、そこで語られる自由主義、人格主義、愛は無邪気というかなんというか、屈託ないシンプルさで、本当に気持ちがいい。
物語は常にハイテンションで、技術・社会への洞察は現代においてもあまりに新鮮である。
 
多くのスペースオペラの原型になっていることは明らかであり、昨日鑑賞したスターウォーズ/フォースの覚醒にも、レンズマン第三作から着想を得たとしか思われない超兵器が登場していて、思わずにんまりしてしまった。
 
レンズマンのテーマは概ねひとつ。宇宙パトロール隊と、ボスコニアの果てしなき戦いである。
それは善と悪、自由と専制、知性と知性、科学と科学の戦いであり、古の種族の代理戦争でもある。
敵は悪だが、極めて知性が高く、秘密を何重にも隠匿して銀河パトロール隊と彼らが守ろうとする文明を瓦解させようとする。
キムは、導師(メンター)アリシア人の導きを経ながらも、卓越した精神と思考力でボスコニアを打ち破る。ときには徹底した秘密工作で、ときには綿密な計画に基づく激烈な攻撃で。
 
また、キムの才覚を見出すや、その指示を仰ぎ、キムのサポートに全力をつぎ込むことを厭わないヘインズ長官は、そのことにより人格的偉大さがより際立つという存在であり、既存の組織における権威主義的なリーダー像への痛烈な批判を体現している。
 
キムを助ける、ヴェランシア人やリゲル人といった異星人レンズマンは、知性のあり方を相対化し、人間を絶対視することへの警句をあたえる。
 
キムの秘密工作時のアバター(仮のプロフィール)も、それぞれ独立の小説の主人公のように極めて活き活きとしていて楽しい。
 
個人的には、キムが主人公の第一作から第三作までのトリロジーがオススメで、そこから先はお好みでどうぞといったところ。
 

 

第一作は、キムのデビュー戦。ヘルマスは敵として不足なし。ハイテンションで一直線で圧倒的スピードで進むそのストーリーは、ある意味、最近のハリウッド映画のよう。ヴィーゼル、トレゴンシーをはじめ主要なサブキャラもいきなり大活躍。(1937年)

銀河パトロール隊 レンズマン・シリーズ

銀河パトロール隊 レンズマン・シリーズ

 

 

第二作。冒頭、壮大すぎる大風呂敷が広げられ、読者を完全に置いてきぼりにするが、本編の完成度は無比。キムのアバター、ワイルド・ビル・ウィリアムスは、キムに匹敵する人気キャラクター。誰もが憧れる。1939年)

グレー・レンズマン レンズマン・シリーズ

グレー・レンズマン レンズマン・シリーズ

 

 

第三作。キムはすでに円熟の域に。名物である秘密工作も、ある意味究極へ。第二作のエンディングから間髪入れない時間軸でスタートする展開は、続編の一つの様式を作ったのではないかと。 1941年)

第二段階レンズマン レンズマン・シリーズ

第二段階レンズマン レンズマン・シリーズ