【ネタバレ超絶注意】マンガ 『ROUTE END』(ルートエンド) について、犯人種明かし回の直前に、考察してみる
ROUTE END (ルートエンド)という漫画を知っているでしょうか。
ROUTE END 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 中川海二
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/06/02
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (1件) を見る
講談社の漫画アプリJUMP+で 隔週連載されているミステリー漫画です。
連続猟奇殺人という、今となってはやや手あかのついたジャンルながら、特殊清掃業(遺体処理を含む部屋清掃等)という特殊なディティールと骨太の人物描写で、異彩を放っている漫画です。
際立った画力で描かれているわけではないのだけれど(失礼)、強烈な表現力と印象的なシナリオに目が離せません。
この漫画、驚愕の展開を経た後、
今、犯人である End が誰なのかの種明かし寸前というタイミングであり、その不吉な予感に、JUMP+のコメント欄は悲鳴で溢れています。
普段は、ネタバレは書かないんだけど、我慢できないので、自分の整理も兼ねて以下考察まとめてみました。
ネタバレ激しいので、未読の人は回れ右でお願いします!
======================
ネタバレ
注意
ネタバレ
注意
======================
はい。ネタバレ見たくない人は帰ったはずなので、始めましょう。
1.End の正体
さて、34話では、警察の捜査本部が容疑者を一本に絞って確保に向けて動き始め、橘Dが鬼頭に対し、End がとある場所で 犯行の真っ最中 だという情報提供をしました。
なので、第35話では、ほぼ間違いなくEndの正体が明らかになります。
(いきなり誰かの回想が入るとかいう悶絶な展開があったら別だけど)
で、End の正体なんですが、主人公の春野太慈(以下、春野)でほぼほぼ間違いないと思います。
作者のミスリード(誤った犯人への誘導)だという期待は捨てられないですが、ここはほぼ確定かと。
1.1. 捜査本部による容疑者確定経緯
第34話で捜査本部が容疑者を絞った理由は以下の2つ。
- B殺害現場への侵入機会があった誰かが明らかになったことと
- サボり常習犯の鎌田巡査部長のサボりにより、誰かのアリバイが消えたこと
です。
物語の時系列的には 1 → 2 だけれど、まずは 2 から行こうと思います。
1.1.1. 消えたアリバイ
サボりの鎌田が誰のアリバイを証言していたのか、当然ながら直接の言及はありません。
ただ、鎌田による幻のアリバイは、第32話で鬼頭によって言及されているアリバイであると考えられます。重要なので、該当する会話を少し長めに引用します。
鬼頭「林の死体がCの可能性があるとなった時点で、あの日が違った意味を持ったが」
七瀬「ええ・・・」
鬼頭「それによって疑わしくなった奴らには犯行日のアリバイがあった」
七瀬「刑事が証人のアリバイですね」
鬼頭「となるとあの日の橘の言動の意図が不明だ。(中略)まあ普通に考えればあの近辺の人間が」
まず1文目ですが、
C とは 三つ子C であり、春野と春野弟と春野甥を包丁で脅した仮面の男です。
従来は、C が End であるというのが定説でした。C による B(アウン橘)殺害現場についての秘密の暴露*1があったからです。
これによって、C の襲撃に居合わせている春野と春野弟(一応、春野甥と五十嵐も)は End の容疑者から無条件に外れていたことになります。
ただ、C が End に殺されたとすると、C ≠ End となり、春野や春野弟を容疑者に戻す必要が出てきます。なので、3文目の「それによって疑わしくなった奴ら」とは、春野や春野弟と考えられます。
4文目には、「刑事が証人のアリバイですね」とあり、これが鎌田によるアリバイと結び付き、まさにこのアリバイが崩れたと考えられます。
なので、鎌田によるアリバイが崩れてしまった「疑わしくなった奴ら」というのは、春野と春野弟で間違いないと思います。
ただ、「実は春野弟が End でした」と言われて、どうですかね。
そんなの納得できます?
という身も蓋もない理由と、第34話で、End の現行犯中に 春野弟は 妻の乳癌の手術に付き添っていたことや、C が 襲撃時に春野弟をほぼ相手にしていなかったこと等から春野弟が犯人である可能性は非常に低いと考えています。
なので、この事情は、春野犯人説を補強する事実と言えます。
ところで、さっきの引用の3文目に戻ると、「犯行日のアリバイがあった」というところの「犯行日」ですが、これは正直分からないです。5文目の「あの日」が 橘B が失踪した日のことなのは分かりやすいので、橘B 殺害の犯行日と思いそうになりますが、個人的には、春野が容疑者と仮定した場合、加藤が死んだ日のアリバイのことだと思います。
根拠は以下の2点です。
- 少なくとも、5人目の被害者である橘Bの犯行日以前である可能性は低い
春野が重要参考人に加わったのは、5人目の被害者である橘Bについての犯行の後のはずで、その前となると、偶然居合わせたという類の証言となる。鎌田がわざわざそんなウソをつく理由も薄いです。橘Bが被害者になった後は、春野は少なくとも重要参考人ではあったはずで、C による襲撃の後は、警護対象でもあったはずで、鎌田が、どうせ容疑者からは外れているし、襲撃もないだろうとたかをくくって、監視兼警護をサボっていたというのが自然かな、と。 - 犯行日が明確なのは加藤だけ
橘B や C を含めた End の被害者については、犯行日は、司法解剖で推定はされているものの、ある程度幅があります。加藤は遺体発見前日の夜に柳女と話しており、犯行時刻まである程度特定可能です。そういう犯行について、犯行時刻のアリバイがあると無いのとでは大違いです。
ちなみに、会話描写から不要な説明や修飾を省く(会話している人たちの間で語る必要がないものは語られない)のが中川海二先生的表現だと思いますし、だからこそ会話に独特のリアリティが生まれているわけですが、一連の会話で「あの日」「犯行日」「あの日」という表現がそれぞれ全部別の日を指しているのはさすがに読み解くのがキツすぎると感じました。
そこがツーカーで通じているのは、鬼頭と七瀬が刑事として優秀かつ頭が切れることを示すものではありますが。
1.1.2. 橘B 犯行場所への侵入機会
橘B は、マンションの空き部屋で End 文字にされていました。
そこは、橘B がかつて特殊清掃した部屋で、床下には Aの白骨が眠っていた部屋でもありますが、*2End がその部屋に侵入した方法は不明なままでした。
第9話で酒井主任(合コンお姉さま)が仲介・管理業者に聴き込みをしていて、その前後で、カギに細工した形跡がないことが明かされています。
ところが、その部屋の管理人が、鍵が未交換であったことに気づき、警察に申告したことから、事情が変わってきます。
ここは酒井主任から野口係長に説明されているので分かりやすいですが、空き部屋になる前の住人が、合鍵などを所持していた場合、その人には犯行の機会があったことになります。前住人が、End 本人である可能性も考え、拳銃を携帯して訪れた結果、前の住人が、春野の知り合いの女性であることが明らかになります。
前住人から話を聞いた後の五十嵐の反応(次に説明します)や、鎌田にアリバイ確認に行った描写から、春野は、前住人を通じて橘B発見現場の部屋の鍵を入手していたと思われます。
1.2. 五十嵐の反応
春野が犯人であること、少なくとも捜査本部が容疑者を春野に絞ったことを示す一番分かりやすい描写は、五十嵐の反応です。
第34話の冒頭で、橘B 発見現場の前住人の家から出てきた五十嵐は、慌てて鎌田の下へ向かいます。おそらく、前住人の女性から春野への繋がりが示され*3 その足で春野のアリバイが本物なのか確認に行ったと考えると筋が通ります。
五十嵐の必死さ、慌て方は、長らく行動を共にし、自らの弟の自殺から立ち直るキッカケを与えてくれた春野が犯人である可能性に対する焦りであると考えられます。
また、犬飼(サボりの鎌田の相方で、Dに襲撃されて頭に包帯巻いてる君)が、第34話の捜査本部の会議の後で、「大丈夫ですか?」と気遣っていることは春野容疑者で捜査方針がまとめられていることを示唆しています。
犬飼は、第29話で五十嵐が春野に電話するシーンや、第33話で春野が女性といることに対する五十嵐の反応などを見て、五十嵐が春野に対して、警察官が通常の事件関係者に対して持つ感情とは少々異なる感情を持っていることに気づいています。
その犬飼が、五十嵐に対して大丈夫ですか?と気遣う理由は、春野が容疑者としてほぼ確定してしまったこと以外には考えられません。
五十嵐の心中を思うと、つらいです。
2.犯人の動機と犯行態様
2.1. 仮説ー End の 多重人格+記憶喪失
これほどの犯罪であるから、犯行の動機の解明は必須です。
しかも、読者が納得できる(少なくとも理解はできる)動機である必要があります。
春野は、幼少期の母の自殺に大きな影響を受けています。それは第1話から一貫した春野の人格描写の主軸です。それが、春野の End としての犯行に関連していることは間違いないと思います。
ところで、春野が犯人だとすると、少なくとも犯行時のしま状な記憶喪失があると考えないと、End の犯行に対する春野のリアクションの数々と整合しません。
そして、おそらくは多重人格であると思われます。
ここは、心理療法士の江崎と精神科医の阿久津という、うってつけの解説者がいるので、何かしら解説されるでしょうが、母の自殺によるトラウマに起因するものと考えてよいと思います。
第2話にて、母の自殺時に母の足に噛み付いていたが、自分ではそのことを覚えていないという趣旨の記述があり、このことも、別人格+別人格の行為についての記憶喪失を示していると解釈できます。
このことを考えると、第32話で同窓生が春野のことを「ヤバかった」と指摘するのも、多重人格的な部分を示唆しているようにも思われます。*4
ここからは単純な推測ですが、春野の母の足に噛みついたエピソードと、春野の怒りに関するエピソード(被害者の息子である若狭、春野弟そして春野自身によって語られています)を考えると自殺者に対する怒りが犯行動機のように思われます。
2.2. End の罪
完全な想像ですが、End=春野 による犯行は、殺人ではなく、首吊り自殺者に対する死体損壊+遺棄なのではないかと思っています。
犯行動機は、自殺者への怒りであり、春野は、橘との出会いや特殊清掃業を行う中で自分の中にある 抑えようのない怒り と折り合いがついていったと思っていたが、
実は、春野の人格から分離した別人格に追い出しただけであって、
別人格の中に怒りが鬱積し、犯行につながったというストーリーです。
春野は、誰かの首吊り自殺者を目撃すると、人格が Endにスイッチして犯行に及び、通常の人格に戻った後は、前後の記憶を喪失するのです。
そう考えると、悲しいながら、美しい物語になります。
そうあってほしいと思います。
首吊りの目撃場所としてあり得るのは神社です。第5話で実際に自殺未遂者が出ていることと、橘Bが神社に向かった描写を最後に消息を絶ったこと以外にそれを示す描写はないですが。
特殊清掃業の現場でスイッチが入らないのは、自殺遺体そのものを見ることが無いためで、第9話の未遂者を目撃してもスイッチしていないため、縊死遺体を目撃しないとスイッチが入らないのではないかと推測しています。
2.3. 仮説に対する反対事実
ただ、乗り越えるべき反対事実もあります。
2.3.1. 検察の検死結果
第11話では、死体解剖の鑑定結果が明らかになっていますが、被害者の死因は3人目の被害者である若狭パパを除いて全員が、甲状軟骨と舌骨の骨折の所見を根拠に、扼頸による窒息死と判断されています。
名古屋市立大学の法医学分野のHPによると、
窒息死は、以下の3種類に分類さます。
- 縊頚(hanging)
- 絞頚(ligature strangulation)
- 扼頚(manual strangulation)
警察の所見は3の扼頚で、仮に扼頚であるとすると他殺であることはほぼ間違いなくなります。
扼頚は実質的にはすべて他殺と考えてよく,被害者は体格,体力的弱者(高齢者・小児・一部の女性)が多い
"上記名古屋市立大学HPより引用"
私の仮説は、1の縊頚→死体損壊なので整合しません。
第11話の報告では、扼頚の根拠は舌骨と甲状軟骨の骨折だけが言及されていますが、名古屋市立大学HPによると、これら骨折のような頸部の部所見は、縊頚と扼頚を判別する際の決定的な要素ではありません。顔面のうっ血、索痕、死斑等から総合的に判断されるようです。
ただ、End事件の場合、遺体はEnd文字にされるために損壊されており、特に首部分は切断されています。更に、第2被害者と第4被害者は死後発見されるまで時間が経っているため遺体状況が良くありません。
また、縊死した後に死体損壊するという事態は想定されていない可能性もあります。
なので、警察の検死結果のみで、死体損壊説が確実に失われるわけではないと思います。
2.3.2. 第3の犯行の異質さ(若狭パパ)
若狭氏の死因は失血死であり、殺人の被害者であることが強く示唆されています。
また息子から語られる被害者像も、自殺とうまく結び付きません。私は、自殺者に偏見は無いつもりだし、誰にでも訪れ得る危険だと思いますが、親族や他人に迷惑をかけて悪びれない放蕩家というのは、自殺者から一番縁遠いステロタイプのように思われます。
結論として、私は、第3の犯行は、春野の犯行ではないと考えています。
犯人は、若狭Jr.と思わせつつ、橘Bなのではないかと思います。
目的は、End 春野の犯行を止めることです。模倣犯が生まれることで、春野の通常人格がEndの存在を認識し、End人格の凶行を止められると考えたのではないでしょうか。
実際のところ、春野は、橘Bが被害者になるまで、Endの犯行について良く知らなかった様子でした。
そうなると、橘は、目的のために手段を択ばず、殺してもいいと判断した人間は殺す、ある意味サイコパスな人格ということになってしまうのですが、柳女の自殺を止めた後の会話で自分の存在を他言したら柳女を殺すとサラッと伝えていることや、菊田(強請られた刑事)をアッサリと殺してしまったところは、そういう人格を裏付けているように思われます。
2.3.3. 加藤臣についての犯行
加藤と柳女の最後の会話からは、加藤が自殺しようとしていたとはなかなか考えられません。
Dが、加藤の死については、柳女に「見当ちがいをしていた」ため「救えなかった」と述べている点も興味深いです。
私の仮説と矛盾しない説明は3つ。
- 加藤は、やっぱりあの家で自殺した。
- 加藤の犯行では、春野(別人格)がこれまでと違ったパターンを取り始めた。
- 加藤は、春野以外に殺された。
3は無いと思います。加藤についての犯行は、春野のアリバイに関連する部分ですし、ここを春野以外が手を下す物語上の理由は薄いです。
加藤は一番掘り下げた心理描写がなされた被害者であり、物語において一番やるせない部分ではありますが、だからこそ、この犯行は春野の手で行われている必要があります。
1は、意外にあると思います。柳女との会話で人生に希望を見出したように見えたその後であっても、絶望はなかなか諦めません。加藤が家族と暮らした家で、"何か"があって、加藤は生きることを諦めてしまった。考えるだけで苦しいですが。あり得る話です。(春野は、加藤から「柳女を頼みます」等とメッセージを受け取ったとか)
2もあり得ると思います。橘B を処理し、春野の通常人格がEndに強い憎しみを持ったこと、春野のEnd人格も変質してしまったという形です。物語上の必然性が微妙ですが。
他にも謎はたくさんあって、どう解決されるのかが楽しみなような怖いような。。
3.橘ABCDの謎
3.1. 指紋の一致
3.2. 橘ABCDの目的、言動の意味
謎が多すぎて切りがないので、列挙してコメントするスタイルで以下いきます。
4.その他の人々の謎
4.1. 江崎(心理療法士兼神主)
4.1.1. 共犯としての江崎
4.1.2. 純粋な悪
4.1.3. 髪
4.2.阿久津(精神外科医)
春野のマンションを見ていたのは、昔自分と似た人が入っているのを見たことがあるから
神社をうろついていたのは、江崎のスカウトのため
と、一旦、すべての行動には合理的な説明がついてしまっているキャラではあります。
ただ、五十嵐の弟との関係等、多少の含みは残っているので、犯行への関与の可能性も捨てきれず。。
5.最後に
疲れて最後ややグダグダになってしまいました。
本当に橘の秘密の解明が楽しみです。もちろんEndの正体も。
はやく5/19になれ~